「次こけたら、あの世だよ」

訪問先で、口癖のようにそう話される方がいます。

少し冗談っぽく笑いながら話されますが、その言葉には本当の怖さも含まれているように感じます。

一度転倒を経験すると、ケガが治ったあとも「また転ぶかもしれない」という不安が残ることがあります。

外出しなくなる方もいますが、この方は転倒後も買い物や掃除を続けています。

一見すると、以前と大きく変わらず生活できているように見えます。

しかし実際には、転ばないように一歩一歩へ強く力を入れて歩いているため、短い距離でもとても疲れると話されます。

今回は、転倒後も歩き続けている90代の方との、実際の訪問についてお伝えします。

外の掃き掃除中に転倒

その方は90代で、以前に脳梗塞を経験されています。

家の中では歩行器などを使わずに移動していますが、何も支えにせず歩けているわけではありません。

室内にある家具や壁など、さまざまな場所につかまりながら、何とか歩いています。外へ出るときには、押し車を使用しています。

ある日、外の掃き掃除をしているときに身体がふらつき、そのまま転倒しました。

転倒した際に、おでこと右肩を打ちました。

頭を打っていたため脳内出血を心配し、病院で頭部CT検査を受けました。右肩もレントゲン検査を受け、幸い大きな異常はありませんでした。

ただ、おでこにはたんこぶができ、右肩は約1か月、思うように上げられない状態が続きました。

検査で異常がなかったからといって、転倒前とまったく同じ状態にすぐ戻れるとは限りません。

痛みだけでなく、「また転ぶかもしれない」という怖さが残ることもあります。

※転倒して頭を打った場合は、見た目に大きなケガがなくても、医療機関への相談が必要になることがあります。意識の変化、吐き気、強い頭痛、手足の動かしにくさなどがある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

転倒後も生活は大きく変わっていない

この方の場合、転倒後に外出しなくなったり、家の中でまったく動かなくなったりしたわけではありません。

現在も買い物や掃除など、できることはご自身で続けています。

ただ、転倒に対する意識は以前より強くなりました。

「次こけたら、あの世だよ」

そう話しながら、転ばないように一生懸命歩いています。

動くことをやめてはいません。

それでも、歩くたびに「転ばないように」と強く意識し、身体へ力を入れるため、歩くだけで疲れてしまうのです。

家の中を歩けても、安心とは限らない

この方の歩行を見ると、家具などにつかまる手へ、とても強く力が入っています。

足も十分に上がらず、歩いている途中にはふらつきも見られます。

家の中では何とか移動できているため、周囲からは「まだ歩けている」と思われるかもしれません。

しかし、家具や壁を手すり代わりにして、手の力で身体を支えながら歩いている状態です。

足が十分に上がらなければ、わずかな段差や床にある物にもつまずきやすくなります。また、つかまろうと思っていた家具が動けば、かえってバランスを崩す可能性もあります。

家の中を歩けていることと、安心して歩けていることは同じではありません。

どのようにつかまっているか、足が上がっているか、歩いたあとに強く疲れていないかまで見ることが大切だと思います。

家の中では歩けても、外出に不安を感じる方については、家の中では歩ける。でも外に出るのが怖い方へでも詳しくお伝えしています。

足だけでなく、身体を起こす力を見る

私が歩き方を確認したとき、特に気になったのは、股関節や臀部、腹筋など、身体を支える部分でした。

体幹の力が弱くなると、身体を起こした姿勢を保ちにくくなり、背中が曲がって前かがみになりやすくなります。

前かがみになると視線も下がり、前方を確認しにくくなります。また、身体の重心が前へ偏ることで、バランスを崩しやすくなることもあります。

さらに、身体を起こせない状態では、歩くときに足を前へ上げにくくなります。

そのため私は、足だけを見るのではなく、

  • 身体を起こした姿勢を保てるか
  • 股関節を使って足を上げられるか
  • 臀部や腹部で身体を支えられるか
  • 歩行中に前へバランスを崩していないか

なども確認しています。

自分の力で足を上げてもらう

訪問では、まず身体へ入りすぎている筋肉の緊張を緩めます。

そのうえで、ご本人に自分の力で足を上げてもらったり、立った状態で背筋を伸ばしてもらったりしています。

運動のほとんどは、私が身体を動かすのではなく、ご本人に動かしてもらいます。

ただ足を動かしてもらうだけではありません。

「足を上げよう」と意識し、自分の力で実際に動かすことを繰り返します。

身体を動かす感覚を大切にしながら、

「自分はまだ動かせる」
「ここまでならできる」

と感じてもらうことも大切だと考えています。

転倒が怖くなると、身体を動かすこと自体に慎重になります。

だからこそ、安全に配慮した環境で自分の身体を動かし、「動かせた」という経験を重ねてもらいたいと思っています。

大きな変化があるわけではない

施術や運動を続けたからといって、歩き方が大きく変わったわけではありません。

ふらつきがなくなったわけでも、今後の転倒を完全に防げるわけでもありません。

ここは、正直にお伝えしたい部分です。

それでも、ご本人は施術後に、

「終わった後ならできる」

と話してくださいます。

施術後の少し動きやすくなった時間に、買い物へ行ったり、掃除をしたりしています。

「元気になったときに、やらないと」

と、ご自身のタイミングで身体を動かしています。

また、ご本人から「足のむくみが少し減って、細くなった」と言っていただくこともあります。

大きな変化ではないかもしれません。

しかし、施術後の時間が、その方にとって買い物や掃除など、生活に必要なことや、やりたいことを続ける時間になっています。

私は、そのお手伝いができていることを、とてもうれしく感じています。

怖いから、すべてやめるのではなく

転倒は、決して軽く考えてよいものではありません。

特に高齢の方の場合、骨折や入院をきっかけに身体を動かす時間が減り、以前の生活へ戻ることが難しくなることもあります。

だからといって、転倒が怖いから何もさせない、外へ出ないようにする、すべて周囲が代わりにする。それだけが答えではないと思います。

ご本人に少しでも「やりたい」という気持ちがあり、できる可能性が残っているなら、安全に配慮しながら、その方法を一緒に考えたいです。

身体を少しでも動かしやすくする。
自分の力で動かせる部分を使う。
必要に応じて、住環境やつかまる場所も見直す。
一人では難しい部分だけ、周囲が支える。

転倒を完全に防ぐことはできませんが、怖さを抱えながらも、その方が自分らしい生活を続けるためにできることはあります。

今回の方の生活全体や、できることを奪わずに支えるという私の考えについては、「我慢して生きていくしかない」そう話す方と、今できることを一緒に考えるでもご紹介しています。

「やってみたい」という気持ちを支えたい

「また転んだらどうしよう」と思いながら歩くことは、身体だけでなく気持ちも疲れると思います。

それでも、この方は買い物や掃除を続けています。

私は、少しでも元気を届け、その方がやりたいことを、できるだけやりたいように続けられるお手伝いができることをうれしく思います。

大きな目標でなくても構いません。

自分でトイレへ行きたい。
家の中を移動したい。
近所へ買い物に行きたい。
自分で掃除を続けたい。

少しでも可能性があり、「やりたい」という気持ちがあるなら、私はその気持ちを支えたいと思っています。

あなたがあなたらしく生きていくために。

身体の状態だけでなく、その方がこれからも続けたい生活を一緒に考えていきます。

まずは無料相談から

「転倒してから、歩くときに身体へ力が入る」
「家の中では歩けるけれど、家具や壁につかまっている」
「足が上がりにくく、少しの距離でも疲れている」
「また転ぶのが怖く、外出する機会が減ってきた」

このような変化が気になる場合は、一度ご相談ください。

ご本人だけでなく、ご家族やケアマネジャーの方からのご相談も承っています。

相談したからといって、その場で利用を決めていただく必要はありません。身体の状態や歩き方、普段の生活を伺いながら、訪問鍼灸でどのようなお手伝いができるか一緒に考えます。

高槻市・茨木市・枚方市・島本町を中心に訪問しています。その他の地域についてもご相談ください。

電話受付:8:00〜20:00
07091746774
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Q&A

Q1. 家の中を歩けていても、転倒の危険はありますか?

家具や壁につかまり、手の力で身体を支えながら何とか歩いている場合もあります。足が上がりにくい、ふらつく、歩いたあとに強く疲れるなどの変化がないかも確認することが大切です。

Q2. 転倒後に頭を打った場合、どうすればよいですか?

見た目に大きなケガがなくても、医療機関への相談が必要になる場合があります。意識の変化、吐き気、強い頭痛、手足の動かしにくさなどがある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

Q3. 訪問鍼灸では、転倒を防げますか?

転倒を完全に防ぐことはできません。身体の状態を確認し、筋肉の緊張を緩めたり、ご本人に合わせた運動を行ったりしながら、身体を動かしやすくすることや、生活を続けるための支援を目指します。