「前はたくさん歩かせてたからなぁ。俺が行けなくなったからなぁ……」
訪問先で、70代の男性が少し寂しそうに話してくださいました。
病気になる前は、毎日1時間ほど愛犬と散歩をしていたそうです。
しかし、脊髄腫瘍を発症して下半身に力が入りにくくなり、手術後も軽度の麻痺や筋力低下、関節の軽い拘縮が残っています。
以前のように愛犬を散歩へ連れて行くことは、まだできていません。
今回は、そんな男性がデイケアでのリハビリと訪問施術を続けながら、少しずつできることを増やしているお話です。
※アイキャッチは、目標とする生活を表したイメージ画像です。実際の患者様の写真や、散歩が実現した場面ではありません。
愛犬との散歩は、大切な日課だった
現在は奥様が愛犬の散歩をされていますが、ご本人が歩いていた頃より、散歩の時間は短くなっています。
愛犬が足をなめ続けて赤くなり、動物病院へ通っていることも、ご本人は気にされていました。
運動量が減ったことやストレスも関係しているのではないかと、心配されているそうです。もちろん、かゆみの原因については、動物病院で診てもらっているところです。
「前はたくさん歩かせてたからなぁ」
この言葉を聞いて、犬の散歩は単なる運動ではなかったのだと感じました。
毎日一緒に外へ出て、歩く。
それは、この方にとって大切な日課であり、愛犬のために自分がしてきたことでもあったのだと思います。
痛くないのに、膝が言うことをきかない
訪問を始めた頃、ご本人は歩行器を使って自分で歩いていました。家の中では、壁などにつかまりながら移動することもできました。
ただ、膝を思うように曲げられません。
痛みはないものの、ご本人は、
「膝が言うことをきかない」
と話されます。
痛くて動かせないのではなく、動かしたいのに思うように動かない。
ご本人の言葉を聞きながら、膝の曲げ伸ばしや足の運び方、立ったときの身体の支え方などを確認しています。
麻痺や関節の拘縮など、当院でご相談を受けているお悩みについては、訪問鍼灸の対象となる症状でもご紹介しています。
「犬も待っていますよ」
愛犬の話を聞いたとき、私は、また散歩へ行けるように一緒に取り組んでいきましょうという気持ちで、
「犬も待っていますよ」
と声をかけました。
ご本人は、ふふっと少し笑われました。
大きな返事があったわけではありませんが、その小さなやり取りが印象に残っています。
「歩けるようになりたい」という目標の先に、どのような生活があるのか。
この方の場合は、愛犬と一緒に外へ出ることです。
その思いを大切にしながら、身体への施術や運動を続けています。
筋肉をほぐす施術から、膝の運動や歩行練習へ
当初は、下肢の筋肉をほぐす施術が中心でした。
その後、歩ける様子が少しずつ変わってきたため、身体の状態に合わせて運動も取り入れています。
現在は、筋肉への施術に加えて、
- 下肢のストレッチ
- 膝を中心とした関節可動域訓練
- 筋力トレーニング
- 歩行訓練
を行っています。
施術を受けるだけでなく、ご本人にも身体を動かしていただきながら、膝の動かしやすさや歩く動作を確認しています。
デイケアと訪問施術の両方で取り組んでいます
この方は、リハビリに取り組めるデイケアへ週3回通い、1回約2時間のトレーニングを続けています。
訪問施術も週3回受けられています。
今回お伝えする変化は、訪問施術だけによるものとは言えません。
デイケアでのリハビリ、訪問での施術や運動、そしてご本人が継続して取り組まれていること。そのような経過のなかで、少しずつできることが増えています。
私も、ご本人の取り組みを支える一人として、その変化を大切にしていきたいと思っています。
「家の中の歩行器、もうなくしてん」
ある日の訪問で、ご本人がニコニコしながら話してくださいました。
「家の中の歩行器、もうなくしてん」
以前は室内に置いていた歩行器を、今は使わずに移動されているとのことでした。
また、私が見ていても身体を起こす力がついてきており、ベッドからの起き上がりも以前より行いやすくなっています。
私は、
「おー!できることが増えていきますね。いろいろできるように、一緒に頑張りましょう」
とお伝えしました。
できることが増えたと、ご本人がうれしそうに報告してくださったこと。
その表情が、私にとってもとてもうれしいものでした。
立ち上がる動作が気になる方へ向けた記事として、最近、立ち上がるのに時間がかかる方へも掲載しています。
歩行器を使わないことだけが目標ではありません
現在、家の中では歩行器を使わずに移動されていますが、外では歩行器を使用しています。
室内で使わなくなったからといって、屋外でも不要になったわけではありません。また、歩行器を使わないことが、すべての方にとってよいとも考えていません。
大切なのは、道具を外すことそのものではなく、安全に移動しながら、やりたいことに近づいていくことです。
この記事も、歩行器の使用を自己判断でやめることを勧めるものではありません。
犬との散歩は、これからの目標
愛犬との散歩は、まだ実現していません。
今は、膝の可動域訓練やトレーニング、歩行訓練を続けている段階です。
以前のように毎日1時間歩けるようになるか、いつ散歩へ行けるようになるかは、お約束できません。
それでも、以前の生活を懐かしむ言葉や、できることが増えたときの笑顔を大切にしたいと思っています。
焦らず、現在の身体の状態を確認しながら、できることを一緒に増やしていきます。
「歩けるようになる」その先を一緒に考える
身体を動かす目標は、人によって違います。
もう一度、犬と散歩したい。
自分で買い物へ行きたい。
家の中を移動したい。
家族と一緒に出かけたい。
どのような動作ができるかだけでなく、その方が何をしたいのか、何を大切にしてきたのかも知りたいと思っています。
できないことだけを見るのではなく、今できることや、これからも続けたい生活を一緒に考える。
こうした思いについては、「我慢して生きていくしかない」そう話す方と、今できることを一緒に考えるでもご紹介しています。
ご本人に「やってみたい」という気持ちがあるなら、その気持ちを支えたい。
この方とも、愛犬との散歩を目標に、膝の運動やトレーニングを続けていきたいと思います。
あなたがあなたらしく生きていくために。
身体の状態だけでなく、その方が大切にしている生活を一緒に考えていきます。
よくある質問
Q1.脊髄腫瘍の手術後に麻痺が残っていても、相談できますか?
まずはご相談ください。手術後の経過や現在受けている治療、身体の状態を伺い、訪問施術でどのようなお手伝いができるかを確認します。
脊髄腫瘍そのものの治療や、麻痺の回復をお約束するものではありません。主治医からの指示や運動上の注意点も確認しながら、対応を検討します。
Q2.デイケアでリハビリを受けていても、相談できますか?
はい、ご相談いただけます。今回の方も、デイケアでのトレーニングと訪問施術の両方に取り組まれています。
現在利用しているサービスや運動内容を伺い、身体への負担やスケジュールも考えながら相談させていただきます。保険の利用条件や必要な手続きについても、個別に確認します。
Q3.膝に痛みがなくても、曲げにくい場合は相談できますか?
はい。今回の方も痛みはありませんが、「膝が言うことをきかない」と話されています。
痛みの有無だけでなく、どのような動作に困っているかを伺い、関節の動きや歩く様子などを確認します。そのうえで、施術や運動で対応できることを一緒に考えます。
Q4.歩行器を使わずに歩けるようになりますか?
身体の状態や生活環境によって異なるため、お約束はできません。
今回も、室内では歩行器を使わずに移動されていますが、屋外では使用しています。歩行器を外すこと自体ではなく、安全に移動して、その方のやりたい生活に近づくことを大切にしています。
※この記事は一人の方の経過をご紹介したもので、同じ変化をすべての方に保証するものではありません。
まずは無料相談から
「病気や手術のあと、足に力が入りにくくなった」
「痛みはないけれど、膝が思うように動かない」
「歩行器を使っているが、もう一度やりたいことがある」
「リハビリとあわせて、身体のケアも相談したい」
このようなお悩みがありましたら、一度ご相談ください。
ご本人だけでなく、ご家族やケアマネジャーの方からのご相談も承っています。
身体の状態や普段の生活、これからやってみたいことを伺いながら、訪問鍼灸でどのようなお手伝いができるかを一緒に考えます。
ご相談から開始までの流れは、初めての方へをご覧ください。
高槻市・茨木市・枚方市・島本町を中心に訪問しています。その他の地域についてもご相談ください。
ギフト訪問はりきゅう院
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